九州・鹿児島県の南方、トカラ列島周辺では、ここ1週間で数百回の小規模地震が観測されました。この現象を受けて、SNSなどで「大地震の前兆では?」という不安の声や噂話が拡がっています。こうした状況でよく耳にするのが「トカラの法則」です。
「トカラの法則」とは、トカラ列島近海で群発地震が発生した後、数週間〜数カ月以内に日本の他地域で大きな地震が発生する――そんな“因果関係があるのでは”という俗説です。特に、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の前にトカラ列島で地震が頻発したことから、インターネット上で注目されるようになりました。
トカラ列島近海の地震 | 回数 | 国内の大規模地震 |
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2000年9月28日~10月6日 | 37回 | 10月6日 鳥取県西部地震 (M7.3 最大震度6強) |
2003年8月19日~29日 | 9回 | 9月26日 十勝沖地震 (M7.1 最大震度6弱) |
2011年1月13日~3月7日 | 27回 | 3月11日 東日本大震災 (M9.0 最大震度7) |
2016年4月1日~8日 | 9回 | 4月14日 熊本地震 (M6.5 最大震度7) |
2016年12月5日~24日 | 55回 | 12月28日 茨城県北部地震 (M6.3 最大震度6弱) |
2018年6月15日~16日 | 4回 | 6月18日 大阪府北部地震 (M6.1 最大震度6弱) |
2023年12月25日~30日 | 17回 | 1月1日 能登半島地震(M7.6 最大震度7) |
今年では、2025年6月21日からトカラ列島近海で700回以上の地震が発生(最大震度4、M5.1)。この時期が“2025年7月5日の大地震予言”と重なるため、再び「トカラの法則」がSNSで拡散されています。
漫画家・たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』(2021年刊)で描かれた「2025年7月5日午前5時、日本で大規模災害発生」という予言も合わさり、今回のトカラ列島の地震が“前兆”として取り沙汰されています。
SNSでは「今回の群発地震が予言された災害のサインかも」 「鬼界カルデラ噴火や南海トラフ地震の前触れか」といった投稿が広がり、九州など他地域の巨大災害を不安視する声も見られます。本来は科学的根拠のない話ですが、複数の偶然や過去の出来事がセットで拡散しやすいのが現代の社会の特徴です。
いっぽう、「デマに踊らされず冷静に」「噂を信じないで」という声と、「地震はいつどこで起きても不思議ではない。いざという時の備えを」という主張が同時に飛び交っている状況があります。
この“矛盾”のように感じる空気感について、多くの人が「信じなくていいなら準備もしなくていいのでは?」と戸惑っているかもしれません。実際、謎の予言やスピリチュアルな情報を信じる/信じないという議論と、“日本列島に地震リスクがある”という現実的な備えは本来は別物。しかし、SNSなどでは境界が曖昧になり、同じ文脈で両方が語られ混乱しやすいのです。
「トカラの法則」のような噂話を信じるか否かの議論は、科学の立場・スピリチュアルな直感、それぞれの“世界の捉え方=主観”の違いだと言えるでしょう。科学的な根拠がない話を「意味が無い」と切り捨てるのも個人の感覚、「地球のエネルギーが変わっている」「古い価値観が崩れる前触れ」と解釈するのもまた一つの思想です。
本当に大切なのは、“他人の主観や噂話”と“現実に必要な自分自身の備え”を混同しないこと。客観視への努力=「自分も主観に囚われているかも」と気付くことではないでしょうか。
いま、世の中は変化もスピードも加速する時代です。古い価値観や「こうすべき」の固定観念だけでなく、新しい意見や柔軟な行動が求められています。
トカラ列島の群発地震や7月5日の予言に振り回されて不安になる必要はありませんが、「科学的根拠がなくとも災害の可能性は常にゼロではない」――だからこそ、誰もが“もしも”に備える意識は持ち続けましょう。
スピリチュアルも科学も否定も肯定もせず、「情報の受け止め方と、自分の備え」を分けて考える。その姿勢こそが、これからの変化の時代を生き抜く知恵ではないでしょうか。