欧米を中心に感染の拡大が続く「サル痘」について、WHO=世界保健機関は引き続き警戒するよう呼びかけました。この記事では、サル痘の症状や予防法などについて詳しく解説します。
サル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患である。1958年にサルで初めて確認されたのでそう命名され、70年に初めてアフリカのザイール(現コンゴ)でヒトへの感染が報告されました。
実験動物として採集されたサルの一部が感染し発症していたことが最初の発見契機であったため、サル痘と呼ばれますが、本来のウイルス保有動物は土着のリスやネズミ(げっ歯類)などです。それらの保有動物から直接ヒトに、あるいは保有動物からサルを介してヒトに感染します。
サル痘に感染してから5-21日間(平均12日間)の潜伏期間を経て、発熱、強い頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛、強いだるさで発症します。
発症から1-3日後には水疱(みずぶくれ)が顔に出現し、やがて全身に広がります。水疱は顔以外では特に手のひらや足の裏にできやすく、口の粘膜や眼、生殖器にも出現します。出現から10日ほどでかさぶたになります。かさぶたが消えるまでは3週間程度かかります。
・発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、発熱1-3日後に発疹が出現。
・リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。
・皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。
・多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがある。
・皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。
・サル痘では手掌や足底にも各皮疹が出現することなどが、水痘との鑑別に有用とされる。
※2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、以下のような、従来の報告とは異なる臨床徴候が指摘されている
・発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合があること
・病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合があること
・異なる段階の皮疹が同時に見られる場合があること
サル痘に特化したワクチンはないものの、天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされています。
流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切です。流行地に滞在中は、リスやネズミ(げっ歯類)に触らないよう、またそれらの動物の肉(ブッシュミート)に触ったり食べたりしないよう注意する必要があります。
発熱、皮疹がありサル痘が疑われる場合、マスク着用を行い、咳エチケットを守り、手指衛生を行います。また、患者が使用したリネン類から感染した報告があることから、使用したリネン類や衣類は手袋などを着用して直接的な接触を避け、密閉できる袋に入れて洗濯などを行い、その後手洗いを行います。
確定患者および疑い患者に対しては飛沫予防策、接触予防策を取る必要があります。
サル痘の主な感染経路は接触感染や飛沫感染であるが、水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、サル痘に関する知見は限定的であること、他の入院中の免疫不全者における重症化リスク等を考慮し、現時点では、医療機関内では空気予防策を実施することが推奨されます。
また、診療行為に伴うエアロゾル感染の可能性が否定できないため、N95マスクなど空気予防策を取る事を検討します。
欧米を中心に感染が拡大しているウイルス感染症「サル痘」が、国内で初めて確認されました。6月下旬から7月中旬にかけて欧州渡航歴のある都内の30代男性です。28日には、都内で2例目が確認されました。
厚生労働省では、令和4年5月20日にサーベイランス強化のため、自治体や医療機関に対して、各国の状況や、サル痘の症状、感染経路等に関する情報提供を行いつつ、サル痘の疑い例があった場合には必要な報告を行うよう依頼するとともに、検疫所においては、出入国者に対する情報提供や注意喚起を行っています。
また、6月1日以降も、自治体や医療機関に対して、積極的疫学調査の取扱いや特定臨床研究等について、事務連絡を発出しています。